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名古屋地方裁判所 平成元年(ワ)1470号 判決

原告

南部薫

右訴訟代理人弁護士

竹内浩史

被告

とみた建設株式会社

右代表者代表取締役

冨田晃

右訴訟代理人弁護士

渡辺明治

主文

一  被告は、原告に対し、金九〇万五一六八円及び内金四五万三一九一円に対する平成元年五月一九日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを二〇分し、その九を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、金一六二万二六三六円及び内金八五万二〇四一円に対する平成元年五月一九日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告は、建築及び土木の設計、施工、管理等を業とする株式会社である。

2  原告は、昭和六三年二月一〇日、左記労働条件で、被告に、建築工事現場管理者として雇用された。

(一) 基本給は月給二五万円、皆勤手当として一か月皆勤につき一万円、通勤手当は通勤に要する交通費の全額とし、これらを毎月二〇日締めで二五日に支払う。

(二) 就業時間は午前八時から午後五時三〇分までとし、休憩時間を除く実労働時間は八時間とする(土曜日も同じ)。休日は日曜日及び祝祭日のほか年末年始、夏休みを含め年間七四日間とする。

3  被告は原告に対し昭和六三年四月一六日解雇の意思表示をしたが、原告は当日までの労働日を皆勤し、その業務に従事した。

この間の被告の指示に基づく時間外労働は別紙時間外労働一覧表(略)〈1〉ないし〈3〉のとおり合計一九二時間五六分である。

したがって、被告は原告に対し、次のとおり合計一六二万二六三六円の賃金等の支払義務がある。

(一) 基本給 五五万六四五二円

(1) 昭和六三年二月一〇日から同月二〇日までの二月支給分は八万八七一〇円(二五万円÷三一日×一一日)

(2) 同月二一日から同年三月二〇日までの三月支給分は二五万円

(3) 同月二一日から同年四月一六日までの四月支給分は二一万七七四二円(二五万円÷三一日×二七日)

(二) 皆勤手当 一万円(ただし、右三月支給分)

(三) 通勤手当 八万九五八〇円

原告が被告本店まで通勤するためには、名鉄(犬山―新名古屋)、地下鉄(名古屋―藤ケ丘)、市バス(藤ケ丘―藤里)を乗り継ぐことを要し、一か月の定期券購入代金は二万九八六〇円でその三か月分(なお、原告は三か月目の中途で解雇されたが、既に三か月目の定期券を購入していたから被告は三か月分の通勤手当を負担すべきである。)は八万九五八〇円となる。

(四) 割増賃金 三一万〇八一五円

(1) 月給制の場合、割増賃金算定の基礎となる一時間当たりの基礎賃金額は労働基準法施行規則一九条一項四号により、月給額を一年間における月間平均所定労働時間数で除した金額になるところ、右金額は次のとおり、一二八八・六六円となる。

〈1〉 月間平均所定労働時間

(三六五日―七四日)÷一二か月×八時間=一九四時間

〈2〉 一時間当たりの算定基礎賃金

二五万円÷一九四時間=一二八八・六六円

(2) したがって、右(1)の二割五分増による一時間当たりの割増賃金は一六一一円(一二八八・六六円×一・二五)となり、原告の時間外労働に対する割増賃金は、二月支給分が四万一八八六円(一六一一円×二六時間)、三月支給分が一六万二七一一円(一六一一円×一〇一時間)、四月支給分が一〇万六二一八円(一六一一円×六五・九三三時間)の合計三一万〇八一五円となる。

(五) 解雇予告手当 四五万九七八〇円

(1) 被告は、原告に対し労働基準法(以下「労基法」という。)二〇条一項本文により、解雇予告手当として三〇日分の平均賃金を支払う義務のあるところ、その額は、同法一二条二項、六項により原告の雇入日である昭和六三年二月一〇日から解雇日直前の賃金締切日である同年三月二〇日までの四〇日間を基礎として計算することになるので、次のとおり、四五万九七八〇円となる。

〈1〉 右四〇日間の原告の賃金総額は基本給三三万八七一〇円(前記(一)の(1)(2))、皆勤手当一万円(前記(二))、通勤手当五万九七二〇円(前記(三)の二か月分)、割増賃金二〇万四五九七円(前記(四)の二月、三月各支給分)の合計六一万三〇二七円である。

〈2〉 したがって、右期間の一日当たりの平均賃金は一万五三二六円(六一万三〇二七円÷四〇日)となり、三〇日分の平均賃金は四五万九七八〇円(一万五三二六円×三〇日)となる。

(六) 付加金 七七万〇五九五円

被告は原告に対し、労基法一一四条により、割増賃金三一万〇八一五円(前記(四))及び解雇予告手当四五万九七八〇円(前記(五))の合計七七万〇五九五円の付加金を支払う義務がある。

(七) 原告は、被告から右(一)(三)の内金として、合計五七万四五八六円の支払を受けた。

4  よって、原告は被告に対し、前項の合計額一六二万二六三六円及び内金八五万二〇四一円(右金員から付加金を控除した額)に対する「請求の趣旨拡張の申立」書送達の日の翌日である平成元年五月一九日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否及び被告の主張

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2のうち、原告が昭和六三年二月一〇日被告に雇用されたことは認めるが、その労働契約の内容は否認する。

被告は、原告を、採用後三か月間は試用期間、給与等は交通費を含み日額一万円でこれを毎月二〇日締切り、二五日に支払う、業務はトヨタホーム愛知の下請として営業活動をする旨の労働条件で雇用したものである。

3  同3の事実(ただし、(七)を除く。)は否認する。

(一) 被告は、原告が前記営業活動をするには適しないと判断し、試用期間中である昭和六三年四月一六日に、建築現場での作業へ職務変更の指示をしたところ、原告はこれを不満として職場放棄をし、自ら退職したものである。

(二) 被告は原告に対し、昭和六三年六月七日の民事調停の席上で、右退職時の未払金二二万三六九六円を支払っているので、原告の雇用に関連して負担すべき債務は何ら存しない。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるからこれを引用する。(略)

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  同2(労働契約)について

1  原本の存在と成立に争いのない(証拠略)成立に争いのない(証拠略)の結果(後記採用しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨を総合すると次の事実が認められる。

(一)  被告は、昭和六三年一月一八日ころ、名古屋東公共職業安定所(以下「東職安」という。)に求人公開カードを提出した。

右求人公開カードには、職種欄に「一級建築士又は現場管理者」、就業場所欄に「当社及び現場」、仕事の内容欄に「建築工事一式による現場管理及び工事に関係する事務処理」、就業時間欄に「八時〇〇分から一七時三〇分まで(土曜一七時三〇分まで)」、休日欄に「日曜、祝日」、賃金形態欄に「月給制」、賃金支払日欄に「毎月二五日」、賃金締切日欄に「毎月二〇日」、毎月の賃金(税込)欄に、基本給及び定額の手当を併せて「一八万円~三五万円」、その他の手当等付記事項欄に「皆勤手当一万円」、通勤手当欄に「定額(最高四二〇〇円まで)」、雇用期間欄に「常用」の記載があった。

(二)  原告(二級建築士)は、昭和六三年二月五日、「建築現場監理、見積」の仕事を希望して、東職安に求職票を提出したところ、同職安から被告の前記求人公開カードを示されたので、被告の求人に応募することとし紹介希望票を提出した。そして、原告は、東職安からの連絡に基づき、同月六日被告の専務取締役冨田拓男及び営業部長三吉彰と面接し、更に同月一〇日に被告代表者冨田晃の採用面接を受け、その結果、賃金は月額二五万円とすることで合意をし、同日から被告に雇用されることになった。

被告代表者は代表者尋問において、採用後三か月は試用期間であり、その間の給与は通勤手当分を含めて日額一万円とすることを提示し、原告はこれを了承した旨供述するが、にわかに措信しがたい。

2  給与以外の労働条件についてみるに、公共職業安定所の紹介が契機となって労働契約が締結された場合の労働条件は、契約時に明示的に異なる合意がされるなどの特段の事情が認められない限り、求人公開カード(証拠略)記載の労働条件によったものと推認すべきところ、まず、通勤手当については、被告代表者が前記のとおり供述するほか、原告も本人尋問において実際に要する交通費の支払が約束された旨あるいは二万六〇〇〇円の支払が約束された旨供述するが、いずれもにわかに措信しがたく、結局、求人公開カード記載の最高額である四二〇〇円の限度においてその支払が約束されたものと認めるのが相当である。休日については、原告は日曜と祝日を含めて七四日と約束されたと主張するところ、原告本人尋問の結果中の被告代表者において日曜と祝日のほか盆と暮れに世間相場に従った休日を約束した旨の供述部分及び弁論の全趣旨によれば、少なくとも原告主張の形態及び日数の休日が約束されたものと認めるのが相当である。原告主張のその余の労働条件、すなわち皆勤手当、就労時間、実労働時間、月給計算の締切日、支払日については、(証拠略)及び原告本人尋問の結果により原告主張のとおりであると認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

三  請求原因3について

1  (証拠略)の結果により成立が認められ、その余の作成部分の成立については当事者間に争いのない(証拠略)、原告及び被告代表者(後記採用しない部分を除く)各本人尋問の結果によれば、次の事実が認められる。

(一)  被告の主な営業内容は、トヨタホーム愛知株式会社が受注したプレハブ住宅建築工事を同社の下請けとして行うことのほか、株式会社冨田造園開発関連の造園工事を行うことであったが、原告は建築現場での監理業務を担当することになった。

原告は、入社後一〇日間は、前任者である伊藤某(昭和六三年二月二〇日ころ退職)と共に、東海市の築波邸ほか建築中の現場を数か所まわって引継ぎを受け、右建築現場での監理業務に従事していたが、他に、被告から、月一回開かれるトヨタホーム愛知の定例施工連絡会議への出席を命ぜられ、昭和六三年二月一七日、三月一四日、四月一二日の三回にわたって右会議に出席した。また、原告は、年一回開かれるトヨタホーム愛知の研修会に、被告の現場作業責任者として同年三月三〇日から同年四月一日まで参加した。

(二)  原告の右研修会等を除く通常の労働実態

原告は、毎朝八時少し前に名古屋市守山区にある被告事務所に出社し、ラジオ体操をしてから、午前中は同所で施工図面のチェック、見積等の事務処理をし、午後は建築現場をまわって、その監理業務に従事し、その後、帰社して職人の手配等翌日の仕事の段取りをつけたうえ、最後に工事日報を作成して一日の仕事を終えるという生活を送っていた。原告の退社時刻は、証拠としてタイムカードが提出されている昭和六三年三月二一日から同年四月一四日までの間は、早くて午後六時二〇分、遅いときは午後八時五〇分で、午後五時三〇分までに退社したことはなかった。

(三)  原告は、昭和六三年四月一六日朝、被告代表者から解雇の通告を受けたが、入社の日から右同日までの日曜、祝日を除く全労働日のうち、同年三月二六日以外のすべての日に出勤した。なお、原告は、同月六日と二〇日には日曜出勤をした。

以上の事実が認められる。被告代表者は、昭和六三年四月一六日、原告に、建築現場における監理のあり方に苦情を述べたところ、原告はその後職場を放棄し退職したもので解雇したのではない旨供述するが、原本の存在と成立に争いのない(証拠略)によれば、被告は右に先立つ四月一四日に、既に東職安に対し、原告に代わる者の求人の申込みをしている事実が認められ、右事実に加えて原告本人尋問の結果に照らすと被告代表者の右供述部分は採用し難く、他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。

2  基本給、皆勤手当、通勤手当について

前記第二項、第三項1の認定事実によれば、原告が就労した間の、基本給は原告主張のとおり五五万六四五二円(ただし、五〇銭以上一円未満は一円に切上げる。以下同じ)、皆勤手当は一万円(昭和六三年三月支給分)、通勤手当は同年二月支給分が一四九〇円(四二〇〇円÷三一日×一一日)、同年三月支給分が四二〇〇円、同年四月支給分が三六五八円(四二〇〇円÷三一日×二七日)の合計九三四八円となる。

3  割増賃金について

(一)  時間外労働時間数

原告は、時間外労働時間数を別紙時間外労働一覧表(略)の〈1〉ないし〈3〉のとおり主張する。

右のうち、〈3〉の分は(証拠略)によれば、昭和六三年三月三〇日から同年四月一日までの分(前記研修期間中にあたる。)を除き、原告のタイムカードの退社の打刻時間をもとに算出したことが認められる。そして、被告において、タイムカードにより従業員の時間監理をしている以上、それを基準に、時間外労働時間数を算定することは相当である。

原告は、右研修中は主催者の指定する施設に宿泊を義務づけされ、昭和六三年三月三〇日の午後五時三〇分から同年四月一日の午前八時まで研修のため拘束されるので、そのうち三月三一日の午前八時から午後五時三〇分までの所定労働時間を除いたその余の時間は時間外労働時間とみるべきであるとの前提のもとに右期間中の時間外労働時間数を主張するが、原告の主張する右時間帯に、原告が従事すべき労働はなく、その業務から解放されているものであるから、それらは労働時間ではないと解すべきで、原告の右主張は失当である。したがって、右〈3〉の四月支給分の時間外労働時間数は三六時間五六分となる。

原告は、同表〈1〉〈2〉の時間外労働時間数を立証する証拠として(証拠略)を提出している。そして、原告は、(証拠略)は工事日報及びタイムカードに基づいて作成したと供述する。しかし、タイムカードの存する右〈3〉の分と(証拠略)の対応部分を比較すると、(証拠略)の時間外労働時間数がタイムカードのそれより少なめに計上したものが二日分(その開きは一分と五三分)、多めに計上したものが一四日分(その開きは一分から二二時間四六分)、一致するものが一日分であることが認められるので、(証拠略)の時間外労働時間数に関する記載の信用性については疑問を抱かざるを得ず、直ちにこれを採用することはできない。しかし、原告の労働実態は右2(二)のとおりで残業が恒常化しており、タイムカードの存する期間中の、最低の時間外労働時間数である五〇分をもって右〈1〉〈2〉の各日における時間外労働時間数としても、その実労働時間の範囲内にあると推認されるので、一日当たり五〇分をもって原告の時間外労働時間数とする。そうすると、右〈1〉の二月支給分は七時間三〇分、右〈2〉の三月支給分は休日出勤分を含めて三七時間四〇分となる。

なお、時間外労働といえども、使用者の指示に基づかない場合には割増賃金の対象とならないと解すべきであるが、原告の業務が所定労働時間内に終了し得ず、残業が恒常的となっていたと認められる本件のような場合には、残業について被告の具体的な指示がなくても、黙示の指示があったと解すべきである。

(二)  割増賃金の計算

(1) 労基法施行規則一九条一項四号でいう一年間における一月平均所定労働時間は一九四・六七時間である。すなわち、被告代表者本人尋問の結果及び公知の事実によれば、原告の昭和六三年(三六六日)における労働休日は、日曜日(五二日)、祝日(一二日)のほか、年末年始の一二月二九日から一月五日までの七日間(ただし、祝日である元旦を除いた日数)及び盆休みの五日間の合計七六日であることが認められるところ、原告は休日につき、右認定の範囲内である七四日と主張するので、右主張に基づいて計算すると(三六六日―七四日)÷一二月×八時間により一九四・六七時間(小数点第三位を四捨五入)となる。

(2) 割増賃金算定の基礎となる賃金については、原告の主張する月額二五万円の基本給の他に、昭和六三年三月支給分については皆勤手当一万円を加算する余地もあるが、原告主張の基本給のみを算定の対象とする。

(3) 右(1)(2)の事実を前提とすると、原告が受け取るべき割増賃金は、労基法三七条、同法施行規制一九条一項四号により

二五万円÷一九四・六七時間×一・二五×時間外労働時間数となり、右時間外労働時間数に前記(一)認定の時間数(ただし、二月支給分は七・五時間、三月支給分は三七・六七時間、四月支給分は三六・九三時間とした。)をあてはめて計算すると、二月支給分の割増賃金は一万二〇四〇円、三月支給分のそれは六万〇四七一円、四月支給分のそれは五万九二八三円の合計一三万一七九四円となる。

4  解雇予告手当について

(一)  被告は、前記認定のとおり、昭和六三年四月一六日、原告に対し、解雇予告手当の支払のないまま解雇の意思表示をしたから、労基法二〇条一項本文により、解雇予告手当として同法一二条所定の平均賃金の三〇日分を支払う義務がある。そして、その一日当たりの平均賃金の額は同条六項、二項により原告の雇入日である昭和六三年二月一〇日から解雇直前の賃金締切日である同年三月二〇日までに支払われた賃金の総額(ただし、これは現実に支払われた賃金だけでなく、未だ支払われていないものであっても既に債権として確定している賃金を含む。)をその期間の総日数四〇日で除した額になると解すべきである。

(二)  右四〇日間の原告の賃金総額は、前記認定のとおり、基本給は三三万八七一〇円、皆勤手当は一万円、通勤手当は五六九〇円、割増賃金は七万二五一一円の合計四二万六九一一円となる。したがって、原告に支払われるべき解雇予告手当の額は

四二万六九一一円÷四〇日×三〇日により、三二万〇一八三円となる。

5  付加金について

(一)  被告は、原告が被告から五七万四五八六円の支払を受けたことを明らかに争わないから、右金員を前記認定の基本給五五万六四五二円、皆勤手当一万円、通勤手当九三四八円に充当すると、その未払額は一二一四円となり、割増賃金及び解雇予告手当に充当すべき金員はないことに帰する。

(二)  したがって、被告は原告に対し、割増賃金一三万一七九四円、解雇予告手当三二万〇一八三円の合計四五万一九七七円の支払義務があるというべきであり、そうであれば、その未払につき被告の責に帰することを不相当とするような事情がない限り、付加金の支払を免れないと解すべきである。そして、本件では被告に右のような事情は認められないから、当裁判所は、被告に対し、右未払額と同額の付加金の支払を命ずることとする。

四  結論

よって、原告の本訴請求は主文第一項の限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 清水信之 裁判官 遠山和光 裁判官後藤眞知子は転補につき署名捺印することができない。裁判長裁判官 清水信之)

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